院長コラム

COLUMN

眼瞼けいれんに対するボトックスについて

2021.04.28

当クリニックでは『ボトックス(ボツリヌス毒素)』による治療を開始します。
「眼瞼けいれん」や「片側顔面けいれん」は、まぶたや口元が不随的にけいれんするという症状が典型的ですが、初期症状として目や目の周囲に違和感や異物感がある、まばたきが多い、眩しい、目を開けているのがつらい、目がショボショボする、といったドライアイとよく似た症状もあります。本治療法は、これらの症状に対して最も有効な治療法と考えられています。
ボトックスは筋肉の緊張をやわらげる作用があります。まぶたのまわりの緊張している筋肉にボトックスを直接注射することで、筋肉のけいれんや収縮の原因になっている神経の働きを抑え、緊張しすぎている筋肉を緩めるものです。
ボトックス治療の効果は通常2~3日後から現れ、おおむね2~4ヶ月ほど効果が続きます。効果が弱まってくると、再びけいれんの症状が出てきますので、繰り返し注射を行う必要があります。副作用として、皮下出血、閉瞼不全、眼瞼下垂、視力低下などが起こる場合がありますが、いずれもボトックスの効果が切れると改善します。
治療を受けた方の80%で症状の改善が得られるという統計が出ていますが、効果の出方や持続時間、また副作用の出現率には個人差があります。また、片眼のまぶたがピクピクと小刻みに動く「眼瞼ミオキミア」との鑑別も必要です。
目のまわりや顔のけいれんでお悩みの方は一度ご相談下さい。  (副院長 記述)

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ものもらい(麦粒腫)

2019.11.26

「ものもらい」という病名は、眼の病気の中で、最も馴染みのある病名の1つではないでしょうか。しかし、同時に最も間違って使われているのも、この「ものもらい」かもしれません。
「ものもらい」の正式な病名は、麦粒腫といいます。まぶた(眼瞼)のふちにある油や汗の分泌腺にブドウ球菌などの細菌が感染して起こる病気です。睫毛の付け根あたりの皮膚が赤く腫れあがり、かなり強く痛みます。進行すると、白い膿点があらわれ、自然に破れて膿が出てきます。重症例では、まぶた全体がパンパンに腫れて、まばたきするだけで痛みを感じます。また、耳の前のリンパ節が腫れることもあります。この病気の原因は、細菌の感染ですから、治療には抗生物質の内服、点眼、軟膏が用いられます。また、膿点がある場合には、穿刺排膿することもあります。「ものもらい」という名前から、他人からうつされたり、他人にうつしたりする病気と思われがちですが、そうした心配はほとんどありません。
一方、この麦粒腫と似た病気で、霰粒腫という病気があります。多くの方は、この霰粒腫のことを、間違えて「ものもらい」と呼んでいるようです。霰粒腫は、マイボーム腺という油を出す分泌腺がつまって硬結(肉芽組織)をつくる病気です。基本的には細菌感染のない無菌性の炎症ですので、痛みは無く、まぶたの皮下に腫瘤を触れるのみです。大きくなれば、まぶたの裏側から切開して摘出します。しかし、時にこの霰粒腫にも細菌が感染することがあります。化膿性霰粒腫と呼ばれています。こうなると先の麦粒腫「ものもらい」と、眼科医でも区別がつき難くなってしまいます。このあたりが、「ものもらい」という病名が、間違って使われている要因の1つかもしれません。 

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