院長コラム

COLUMN

紫外線の眼障害

2022.06.08

 夏の気配が日に日に強くなり、紫外線の気になる季節となりました。そこで、今回は紫外線の眼に対する影響についてお話ししたいと思います。
 先ずは紫外線の定義です。可視光線(波長400nm~760nm)よりも波長の短い光(波長320∼100nm)を紫外線(UV)と呼びます。紫外線はさらに、人体や環境に対する影響から長波長(400~320nm)のUVA、中波長(320∼290nm)のUVB, 短波長(290~100nm)のUVCに分類されます。このうちUVAは皮膚の日焼け以外、生体に対する障害はほとんど無いと考えられています。
 太陽光には、上記の3種類の紫外線が含まれていますが、最も毒性の強いUVCは大気中のオゾン層によって完全に吸収されてしまうため、私たちの所まで到達する紫外線は、UVBとUVAのみです。
 雪山など紫外線の強い所では、UVBの多くを吸収する角膜上皮細胞が障害され「びまん性表層角膜炎」を起こします。所謂「雪目」と呼ばれるもので、異物感、眼痛を訴えます。また、結膜(白目)が角膜(黒目)に進入する「翼状片」という病気も慢性的な紫外線曝露が原因と考えられています。角膜を透過したUVBとUVAは、そのほとんどが水晶体で吸収され「白内障」の一因になると考えられますが、太陽光由来の紫外線が眼球奥の網膜にまで達することはほとんどありません。
 太陽光以外、殺菌灯や溶接の光など人工の紫外線には毒性の強いUVCが含まれています。保護メガネ無しで5∼10分以上曝露されると「びまん性角膜炎や急性結膜炎」を起こし、激しい眼痛、充血、目やに、流涙などを自覚します。時に、点眼薬による「アレルギー性角結膜炎」などと間違われることがあります。
 元々眼には紫外線をブロックする仕組みが備わっていますので、通常の太陽光由来の紫外線を過度に怖がる必要はありませんが、紫外線の非常に強い環境や人工紫外線に曝露される場合には、眼障害予防のためのサングラスや保護メガネが有用です。尚、コンタクトレンズは、その素材自体がほとんどの紫外線を遮断すると考えられていますが、更に紫外線吸収剤を含んだレンズも市販されています。
 紫外線は、ビタミンDを産生し骨の発育を促進したり免疫力を高めるなど身体に良い作用もあります。適度な太陽の光を浴びて、この夏を元気に乗り切りましょう。

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