院長コラム

COLUMN

花粉によるアレルギー性結膜炎

2021.01.10

皆様、明けましておめでとうございます。

昨年(令和2年)は、コロナ、コロナで明け暮れた1年でしたが、年が明けても全く収束の兆しが見えません。遂に1月7日関東の1都3県に2回目の緊急事態宣言が発出されました。そんな深刻な状況ではありますが、一方で連日のコロナ関連報道には少々うんざりしている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、コロナとは全く別の話題、「花粉によるアレルギー性結膜炎」の話をしたいと思います。

先ずは、この病気の成り立ちについてお話します。スギなどの花粉が眼局所(結膜)に接触すると、肥満細胞に働きかけてヒスタミンと言う化学物質を遊離させます。遊離したヒスタミンは、結膜組織内にある三叉神経細胞のH1受容体に結合する事により痒みを惹起します。また、同様の機序により結膜毛細血管を拡張させて充血や浮腫(むくみ)と言った炎症反応を引き起こします。この様な状態が「花粉症によるアレルギー結膜炎」です。この疾患に対する主な治療法は、抗アレルギー薬の点眼です。抗アレルギー薬の作用点は、3つあります。先ず1番目の作用点は、肥満細胞からヒスタミンが遊離するのを抑える働きです。2番目には、三叉神経等の結膜組織内細胞にあるH1受容体に結合して、ヒスタミンが受容体に結合するのをブロックする働きです。更に3番目の作用点は、花粉飛散の前に予め投与することによって、ヒスタミンの結合可能なH1受容体の数を減少させる働きです。点眼薬の種類によっては、1番目の働きのみのもの、1,2番目の働きがあるもの、更に3つとも作用点があるものなどがあります。最近特に3番目の働きが注目されています。抗アレルギー薬を花粉の飛散開始日より2~3週間前から投与する事によって、ヒスタミンの付くH1受容体の数を予め減少させておき、痒みなどの症状の発現を遅らせ、かつ重症化させない効果があると考えられています。所謂、「初期療法」呼ばれる投与法です。

今年の関東地方におけるスギ花粉の本格的な飛散開始日は、2月中旬と予測されています。とすると、抗アレルギー薬の点眼は、1月下旬から始めるのが症状軽減の為に有効と思われます。毎年花粉症に悩まされている皆様、今年は少し早めに抗アレルギー薬の点眼を開始する「初期療法」を試してみてください。

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新型コロナウイルスの眼科関連情報

2020.04.19

新型コロナウイルスは、鼻腔、口腔粘膜のみならず、眼の結膜(白目)にも感染し、結膜炎症状を引き起こすとの報告があります。中国武漢の患者さんについての報告では、結膜から採取した涙でPCR検査が陽性になった方は、感染者全体の約2%で、比較的重症者に多かったとしています。結膜炎の症状は、充血や眼脂で、他の結膜炎と同様との事でした。従って、結膜炎のみで新型コロナウイルスの感染と診断することは不可能と思われます。予防法は、従来言われているような、他人との接触を避ける、こまめな手洗い、マスク装用などの他、ご自分の眼を触らないことが重要です。また、眼鏡やゴーグルの装用も初期の感染を防ぐ効果があるかもしれません。コンタクトレンズは、着脱の際には十分手指を洗ってください。心配であれば、一時的に眼鏡装用に変えてください。

当クリニックは、コロナウイルス、アデノウイルス等の感染予防に万全の体制を整えております。眼科受診が必要な場合は、躊躇せず安心してご来院ください。

さらに詳しい事は日本眼科学会、日本眼科医会のHPに掲載されていますので、そちらをご覧ください。

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ウィルス性結膜炎

2020.02.21

新型コロナウィルス性肺炎に関するニュースが連日報道されています。眼科関係でもウィルスが原因で発症する病気があります。前回取り上げたアデノウィルス性結膜炎はその代表疾患ですが、その他にもウィルス感染が原因の結膜炎があります。今回は、アデノウィルス性結膜炎(流行性角結膜炎)以外のウィルス性の結膜炎についてまとめておきたいと思います。

先ずは、急性出血性結膜炎です。エンテロウィルス又はコクッサッキーウイルスによって発症する結膜炎です。非常に感染力が強く、過去に大流行したこともありますが、最近はあまり見られなくなりました。潜伏期は約1日で、両眼に強い充血、目やに、流涙、瞼の腫れ、耳前リンパ節腫脹などとともに、白目に出血班(結膜下出血)が出現するのが特徴です。院内感染、家族内感染が多くみられます。治療は、アデノウィルス性結膜炎と同様の点眼薬を使用します。

次にヘルペス性結膜炎。主に単純ヘルペスウイルスの感染で発症します。充血、目やになどの結膜炎症状の他に眼瞼に水疱(眼瞼ヘルペス)や角膜や結膜に樹枝状や斑状の潰瘍を伴うことがあります。これらの所見があれば、診断は容易ですが、水疱や潰瘍が無いこともあり、その場合にはアデノウィルス性結膜炎との鑑別は困難です。治療にはゾビラックス眼軟膏を用います。ステロイド点眼はかえって症状を悪化させるため禁忌です。ヘルペスウィルスは、成人の95%で既に感染済みですので、改めて他の人からうつるとか他の人にうつすという事はほとんどありません。

咽頭結膜熱という病気は、のどの痛み、発熱等風邪様症状を伴った結膜炎です。かつては子供たちがプールで感染することが多かったため「プール熱」と呼ばれていましたが、その後、流行性角結膜炎と同様アデノウィルス(主にⅢ型)の感染が原因であることが判り、現在ではアデノウィルス性結膜炎の1つとされています。

現在ウィルスに有効な薬剤は、ほとんどありません。従って、ウィルス性の病気に対しては、他人との接触を避ける、こまめな手洗い、75%以上のエタノールでの消毒などのよる感染予防が何よりも大切です。

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アデノウィルス性結膜炎

2020.01.27

 今回は「アデノウィルス性結膜炎」を取り上げます。結膜炎とは、結膜(白目)に炎症を起たす病気で、原因によっていくつかの種類に分類されます。ウイルスの感染が原因のアデノウィルス性結膜炎や急性出血性結膜炎、細菌感染によって起こる細菌性結膜炎、アレルギーが原因のアレルギー性結膜炎や巨大乳頭性結膜炎などがあります。
 アデノウィルス性結膜炎は、アデノウィルスの感染によって発症する急性結膜炎です。感染力が非常に強いため流行性角結膜炎とも呼ばれています。感染してから約1週間の潜伏期の後、結膜の充血、目やに、流涙、ゴロゴロした異物感、まぶたの腫れなどが出てきます。ほとんどの場合両眼性です。耳の前のリンパ節が腫れて痛みを感じる場合もあります。重症の場合、角膜の上皮細胞が剥がれて角膜びらんを起こすとがあり眼を開けていられないほど強い痛みを感じます。アデノウィルスに直接効くお薬はありません。炎症を抑えるためにステロイド点眼薬、細菌の2次感染を防ぐために抗生物質の点眼薬を使います。1~2週間で改善しますが、この間は周囲の人にうつらないように十分注意する必要があります。ご自分の眼に触れないこと、握手等他の人との接触を避けること、こまめに手を洗うこと、出来れば75%以上の消毒用アルコール液で自分の手や触れたものを消毒すること、タオル等を家族と共用しないこと、などに注意しましょう。重症であったり、ステロイド点眼が不十分な場合には、角膜上皮下に点状の混濁が残り、半年から2年間ほど軽度の視力低下を来たすことがあります。
 アデノウィルス性結膜炎は、他の結膜炎やコンタクトレンズ障害、ブドウ膜炎などとの鑑別が難しく、さらに感染力が強く学校や職場で漫延し社会的な問題にもなりかねない病気であることから、何時の時代にも眼科医を悩ませ続けている厄介な病気です。

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