▶ものもらい(麦粒腫)

2019年11月26日

「ものもらい」という病名は、眼の病気の中で、最も馴染みのある病名の1つではないでしょうか。しかし、同時に最も間違って使われているのも、この「ものもらい」かもしれません。
「ものもらい」の正式な病名は、麦粒腫といいます。まぶた(眼瞼)のふちにある油や汗の分泌腺にブドウ球菌などの細菌が感染して起こる病気です。睫毛の付け根あたりの皮膚が赤く腫れあがり、かなり強く痛みます。進行すると、白い膿点があらわれ、自然に破れて膿が出てきます。重症例では、まぶた全体がパンパンに腫れて、まばたきするだけで痛みを感じます。また、耳の前のリンパ節が腫れることもあります。この病気の原因は、細菌の感染ですから、治療には抗生物質の内服、点眼、軟膏が用いられます。また、膿点がある場合には、穿刺排膿することもあります。「ものもらい」という名前から、他人からうつされたり、他人にうつしたりする病気と思われがちですが、そうした心配はほとんどありません。
一方、この麦粒腫と似た病気で、霰粒腫という病気があります。多くの方は、この霰粒腫のことを、間違えて「ものもらい」と呼んでいるようです。霰粒腫は、マイボーム腺という油を出す分泌腺がつまって硬結(肉芽組織)をつくる病気です。基本的には細菌感染のない無菌性の炎症ですので、痛みは無く、まぶたの皮下に腫瘤を触れるのみです。大きくなれば、まぶたの裏側から切開して摘出します。しかし、時にこの霰粒腫にも細菌が感染することがあります。化膿性霰粒腫と呼ばれています。こうなると先の麦粒腫「ものもらい」と、眼科医でも区別がつき難くなってしまいます。このあたりが、「ものもらい」という病名が、間違って使われている要因の1つかもしれません。