▶近視について 1.近視で重要なこと

2020年07月08日

前回お話したオンライン学会の一つで、近視抑制に関するセミナーがありました。小中学生のお子さんをお持ちのお母様方にとっては、大変興味のある話題かと思いますので、近視について、2回に分けてお話ししたいと思います。

近視とは、角膜や水晶体の屈折力が強いため、又は眼軸長(眼球の前後径)が長いため、遠方の物を見た時、像のピントが網膜の前方で結んでしまう状態です。前者は屈折性近視、後者は軸性近視と呼ばれています。近年、パソコンやスマートホンの普及のためか、近視になる子供たちが益々増加しています。慶応大学の調査(2018年)では、東京都内の小学生の約75%、中学生の95%が近視との事です。通常の近視は眼鏡又はコンタクトレンズを装用すれば、日常生活に支障をきたす事はありません(単純近視)。しかし、近視がより強くなり、眼球の眼軸長が長くなり、いわゆる強度近視にまで進行してしまうと、網膜脈絡膜萎縮、黄斑出血、黄斑円孔、網膜分離、網膜剥離などを併発し(悪性近視)、最悪の場合失明に至る事もあります。強度近視による網膜脈絡膜萎縮症は、我が国の中途失明の原因疾患の中で4,5番目、原因全体の5~8%を占めており、東京都の難病に指定されています。この軸性近視の原因すなわち何故眼軸長が伸びるのかについて、遺伝、環境どちらの因子がより強く関与しているのか、長い間議論されてきました。サルやヒヨコの眼を用いた実験は世界中で行われました。私も30代の頃、眼球の壁である強膜のコラーゲン線維の型を調べることにより眼軸長伸長の原因を解明しようと試みたことがありました。残念ながら、当時の研究からは、画期的な成果を得る事は出来なかったように思います。しかし、最近になって眼軸長が伸長する原因とその抑制方法について、先のセミナーでも紹介、議論されていましたが、いくつかの優れた研究が報告されています。次回は、最近研究されている近視進行の原因とその抑制方法について、具体的にお話したいと思います。