▶近視について 2.近視進行抑制法

2020年07月29日

先のウェブ学会のセミナーで、慶応大学と大阪大学の先生がご講演されていた内容を含め、最近話題になっている近視進行抑制の方法をいくつかご紹介します。①毎日一定時間屋外活動で太陽の光を浴びる。屋外活動の時間は、長い程抑制効果が大きくなりますが、一日1~2時間、一週間10時間程度で良いとされています。太陽光の中の紫外線に近い紫色の光が眼軸長の伸長を抑えると考えられています。②オルソケラトロジー。特殊な形状のハードコンタクトレンズを夜間就寝中に装用させ、中央部の角膜を平坦化させ、屈折力を下げると共に、眼軸長の伸長を抑制させようとする方法です。装用開始年齢が早い程効果が高いと言われています。しかし、小学校低学年から角膜形状を変化させて後々問題が生じることは無いのか?という心配もあります。③散瞳・調節麻痺剤であるアトロピン点眼薬を低濃度(0.01~0.5%)に希釈したものを長期に点眼する。その効果によって、屈折値、眼軸長共に抑制しようとする試みです。0.01%だと効果が弱く、0.5%では散瞳や調節障害で日常生活に支障をきたすことがあります。我が国では低濃度アトロピン点眼薬は販売されておらず、眼科医が個人的に海外から輸入して使われています。一部では、若年者への長期投与に対する悪影響も懸念されています。④高齢者が使用するような二重焦点や累進多焦点の遠近両用メガネを装用し、近見時の調節緊張を軽減し近視抑制を期待する方法です。種々のデザインのレンズが考案されていますが、抑制効果はあまり大きくはないようです。⑤眼鏡と同様にソフトコンタクトレンズでも、いくつかの遠近両用レンズが考えられています。コンタクトレンズは、角膜に密着しており、眼鏡よりも近視抑制効果が大きいと言われています。ただ、6,7歳の小児にコンタクトレンズの装脱や管理は難しいかもしれません⑥クロセチンの内服。クロセチンは、クチナシ等に含まれるカロテノイドという黄色の色素の1つです。従来より抗酸化作用、血液循環亢進、抗炎症作用などを有すると考えられていましたが、最近EGR1という近視進行抑制遺伝子の発現を促進することで、近視進行を抑制する事が解ってきました。既にサプリメントとして市販されています。

実際の治療にあたっては、治療効果もさることながら、副作用・合併症等も考慮して十分に検討してから選択すべきと思います。