▶飛蚊症

2020年09月07日

明るい場所で白い壁などを見ると、黒い点状や斑状のもの、糸状のもの、雲のようなものなどが見えることがあります。蚊が飛んでいる様にも見える事から、その状態を「飛蚊症」と呼んでいます。飛蚊症の正体は、眼の中の硝子体中にある混濁で、これが網膜に映る事で自覚されます。飛蚊症は、問題の無い正常な眼でも出現します。特に近視の強い人の眼にはよく観られます。病的な飛蚊症としては、網膜剥離の際に出てくるものが有名です。網膜剥離は、その前段階として網膜が破れて穴(網膜裂孔)があきますが、その際網膜にある血管も一緒に破れた場合には血液成分が硝子体内に流れ出します。この血液血球成分が、無数の飛蚊症として自覚されます。「眼の中に黒い墨の様なものが流れてきた」と表現する患者さんもおられます。このような飛蚊症は、網膜剥離や網膜裂孔だけではなく、網膜硝子体に出血を来たす病気でも起こり得ます。例えば、糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、網膜中心静脈閉塞症などです。さらに出血性の病気以外に、眼内に炎症が起きるぶどう膜炎という病気でも多数の飛蚊症が自覚されます。ぶどう膜炎の仲間には、ベーチェット病、サルコイドーシス、原田病、感染性ぶどう膜炎などがあります。悪性リンパ腫やアミロイドーシスという稀な病気でもなかなか治らない飛蚊症が観察されます。また、リング状のものが見えるという訴えもしばしば聞かれます。これも飛蚊症の1つで、後部硝子体剥離、すなわち網膜に接着していた後部硝子体が網膜から剥がれた時に出現します。その事自体は、病的なものではなく、加齢変化と考えられます。この様に飛蚊症は、正常眼から重篤な病気まで様々な病態で現れます。飛蚊症に気付いたら、必ず眼科的検査を受けるようにしてください。