院長コラム

COLUMN

プリザーフロマイクロシャント手術(2)

2024.10.02

 前回に続いて、プリザーフロマイクロシャント手術の有効性について、具体的にご説明いたします。
1.眼圧下降効果:臨床試験において、術後の平均眼圧が30~50%低下することが確認されました。また、術後6か月では、約40%の眼圧低下が見られ、多くの方が目標とする眼圧を達成しています。
2.薬物治療の削減:本術式を施行された方の多くは、術後に点眼薬治療が50%以上削減されたというデータがあります。薬の種類や量が減ることで、患者様の負担が軽減されるだけでなく、薬による副作用のリスクも低くなります。
3.トラベクレクトミー(緑内障ろ過手術;従来の術式)との比較:眼圧下降効果を比較すると、プリザーフロマイクロシャント手術は同等又はやや劣る傾向がありますが、合併症のリスクは、かなり低いとされています。特に、トラベクレクトミーでよく見られる術後の瘢痕形成や過度の眼圧低下などの問題が少なく、安全性が高いと言えます。
4.長期的な効果の持続:3年間の追跡調査では、プリザーフロマイクロシャントを使用した方の多くが安定した眼圧を維持しており、追加手術や薬物治療が必要なケースが少ないことが確認されています。緑内障は、慢性的な病気であるため、長期的に眼圧が安定することは、非常に重要です。
5.生活の質(QOL)の向上:患者様の生活の質(QOL)が大きく向上します。多くの方が術後視力の安定を実感し、日常生活における不便さや不快感が軽減されたとの報告もあります。
 以上、プリザーフロマイクロシャント手術について、ご説明いたしました。
緑内障の治療について疑問のある方、この手術法に関心のある方、是非ご相談下さい。(文責;副院長)

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新たな緑内障手術:プリザーフロマイクロシャント手術(1)

2024.09.15

 前回のコラムでプリザーフロマイクロシャント手術について、簡単な紹介をさせていただきました。緑内障は、進行すると視力を失うリスクがあるため、適切な眼圧の管理が非常に重要です。プリザーフロマイクロシャント手術は、従来のろ過手術に代わる眼に負担の少ない治療法として注目されており、すでに当院でも採用しておりますが、今回正式に認定されたことを報告いたします。
 そこで今回、2回にわたって、このデバイスの有効性について、より詳しく説明したいと思います。
 プリザーフロマイクロシャントは、眼内の房水(目に中にある液体)を眼外に排出する事で眼圧を下げるデバイスです。長さは8.5mm、内径はわずか70μmと非常に小さく、ポリスルフォンという生体適合性材料でできているため、眼組織に対して非常に低侵襲で、体内での安定性が高く長期的に機能し続ける設計となっています。
 従来の緑内障手術(トラベクレクトミーなど)に比べて、手術リスクが低く、眼圧下降もほぼ同程度で、術後の回復も早く、特に中等度から重度の緑内障患者様に有効とされています。
 次回は、具体的にどのような有効性があるのか、いくつかのポイントに分けて具体的にご説明したいと思います。(文責;副院長)

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緑内障手術の新たな術式を採用しました

2024.06.05

 緑内障診療ガイドラインによると、緑内障とは「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義されています。
眼圧を十分に下降させることが唯一の治療になるわけですが、その手段の一つに手術が
あります。
 緑内障手術には大きく分けて流出路再建術と濾過手術の二種類の方法があります。
前者は当院でも従来から行われてきた術式で、後者と比較すると合併症は少ないが眼圧
下降効果はやや劣ります。軽度から中等度の緑内障の方や使用している目薬の種類を1本でも減らして日常の負担を減らしたい等の患者様に向いてます。
 一方、濾過手術は緑内障の進行が早い、眼圧が思うように下がらない患者様で、より厳格に眼圧を下げなくてはいけない場合に適応となります。
従来の濾過手術は眼圧下降効果は優れているものの、合併症の発生率がやや高く、術後
の眼圧が安定するまで時間を要したりと管理が難しい側面があり、クリニックで行うに
は少々ハードルの高い術式でした。
 しかし、近年プリザーフロマイクロシャント手術という新しい術式が開発され、低侵襲で合併症の発生率も低く、将来的にも期待が持てる術式と考えられていることから、今回当院でも採用する運びとなりました。
 緑内障治療の基本は点眼薬ですが、生涯にわたって緑内障と上手に付き合っていくための一つの手段として本術式が有用と思われる患者様には提示、選択していきたいと考えております。(文責:副院長)

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落屑緑内障について

2023.05.06

 当院で治療中の緑内障患者様のうち、手術適応のある中等度以上の患者様には、順天堂大学眼科緑内障外来の松田彰助教授との併診をお願いしています。先の日本眼科学会総会で、松田先生が演者として参加されていた「落屑緑内障」に関するシンポジウムを拝聴して来ました。そこで今回は、この落屑緑内障についてお話ししたいと思います。
 「落屑」とは聞きなれない言葉ですが、ふけの様な細かい白いゴミが眼内の水晶体や虹彩などに付着した病態を落屑症候群と呼びます。この落屑が隅角部に沈着して、眼内の水が外へ出にくくなり、眼圧が上がると落屑緑内障になります。通常は、片眼に発症しますが、加齢とともに両眼性になることもあります。眼圧の変動が激しく、時には緑内障発作のように40mmHg以上に上がることもあります。また、治療に対して眼圧のコントロールが悪く、進行が速い事も特徴です。治療は、通常の開放隅角緑内障と同様に、種々の点眼薬、レーザー治療さらには観血的手術が行われますが、予後の不良な症例が多いとされています。また、落屑物質は水晶体嚢やチン氏小体、虹彩、角膜内皮にも沈着するため、白内障や水晶体脱臼、散瞳不全、角膜内皮障害などが合併しやすくなります。
 今回の学会で松田先生は、手術法に関するお話をされていました。落屑緑内障、特に難治性症例、高齢者症例に対しては、チューブシャント挿入術が良いのではないか、とのお話でした。
 落屑緑内障と診断された患者様は、通常の緑内障患者様に比べ、より頻回に緑内障検査を行い、眼圧や視野の状態を十分に把握しておく必要があると思います。

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緑内障発作と緑内障の種類

2020.10.11

「内科の先生に、お薬を処方したいのだけれど緑内障を悪化させることがあるので内服可能かどうか、眼科の先生に聞いてください。」と言った質問を緑内障の患者様から受ける事があります。ある種の鎮痛剤、睡眠薬、安定剤、消化管運動抑制剤(ブスコパン等)、パーキンソン病治療薬など抗コリン作用のある薬剤を投与されると、瞳孔が拡大し隅角(眼内のお水の出口)が狭くなり、眼内に水がたまり、眼圧が急激に上がってしまうことがあります。「急性緑内障発作」と呼ばれる状態です。緑内障発作を起こすと、瞳孔が拡大し、白目は充血し、すりガラス越しに見ているようにかすみ、視力が低下します。また、眼痛、頭痛、吐き気などを自覚することもあります。こうなってしまったら、直ちに眼科的な治療をして、眼圧を下げなければなりません。高眼圧のまま放置しておくと短期間に失明に至る場合もあります。しかし、この緑内障発作は、全ての緑内障患者様に起こるわけではありません。緑内障は、隅角の広さによって、広隅角緑内障と狭隅角緑内障の2つのタイプに大別されます。緑内障発作は、このうちの狭隅角緑内障の患者様のみに起こります。我が国では緑内障患者様の多くは、広隅角緑内障です。緑内障と診断された方は、ご自分が上記の2つのタイプのどちらの緑内障か、知っておく必要があります。必ず掛かり付けの眼科医に聞いておいてください。一般的に、元々遠視で裸眼視力が良い人は狭隅角のことが多く、その様な方は加齢とともにますます隅角が狭くなり、緑内障発作を起こす可能性が高くなります。年齢が50才以下の方は、たとえ狭隅角であっても、緑内障発作を起こすことは殆どありません。従って、緑内障と診断された方であっても、広隅角緑内障の方、年齢が50才以下の方は、抗コリン剤の投与は可能です。一方、50才以上の狭隅角緑内障の方は出来るだけ抗コリン剤の投与は避けていただくように、内科の担当医にお伝えください。

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