院長コラム

COLUMN

眼科診断学 ー眼科診療の方法手順ー

2019.08.20

眼科医になりたての頃、最初に先輩から教えられるのが、眼科診断学です。眼科診断学とは、眼の中に潜んでいるかもしれない異常や病気を見落とすことなく効率よく診察する方法手順の事です。今回は、この眼科の診察方法について、お話したいと思います。

初めて来院された患者さんには、どんな異常があるのか(主訴)を問診票に記入していただきます。私たち眼科医や視能訓練士(眼科検査員)は、その主訴を頭に入れながら、最初に視力検査をします。視力検査は、眼科診断学の基本中の基本です。特に近視、遠視、乱視などの屈折異常を正しく矯正した視力(矯正視力)を重視します。もし、この矯正視力が(1.0)に達していない場合には、何らかの眼科的病気の存在を疑います。矯正視力の低下を起たす病気の代表は、角膜の混濁、白内障、網膜黄斑部疾患などですが、その他様々な目の病気で矯正視力が低下します。

次に眼圧を測定します。風や小さなチップを黒目の表面に当てて測定します。眼圧の平均値は、約14mmHg(ミリ水銀柱)ですが、20mmHgを越えるようであれば、緑内障を疑います。しかし、眼圧が正常付近であってもそれだけで緑内障を否定することはできません。近年、眼圧の正常な緑内障患者さんが沢山存在することが判ってきました。緑内障患者さんのうち、実に75%が正常眼圧の緑内障と言われています。逆に眼圧が低かった場合、特に左右の眼の一方が明らかに低い場合には、網膜剥離が気になります。

患者さんが「二重に見える、目の位置がずれる」などを訴えていれば、眼位や眼球運動の検査をします。斜視や眼球運動障害の有無が分かります。

続いて外眼部即ちまぶたの状態を観察します。まぶたに腫れやしこりがないか(霰粒腫、麦粒腫)、炎症(眼瞼炎)がないか、をチェックします。

次に細隙灯顕微鏡という器械を使って、結膜(白目)や角膜(黒目)の状態を観察します。種々の結膜炎、強膜炎、角膜の病気が観察できます。さらに、水晶体の混濁すなわち白内障の有無、また虹彩炎、ブドウ膜炎と言った眼内の炎症もこの器械で観察することができます。

最後に、眼底検査用のレンズを使って、眼底の所見を観察します。瞳孔の大きさをそのままにした眼底検査では主に視神経乳頭や黄斑部の所見を観察します。眼底の周辺部まで広い範囲を観察したい時には、瞳孔を散瞳剤で大きくした後、倒像鏡やスリーミラーというレンズを用います。糖尿病網膜症、種々の眼底出血、網膜変性、網膜裂孔、網膜剥離などの検索に有用です。

ここでお話した一連の検査は、現在どこの眼科でも行われている基本的な検査だと思います。これらの検査を一つ一つ丁寧に実施することによって、眼の中に隠れている病気を見落とすことなく見つけ出すことができます。場合によっては、これらの基本的な検査で得られたデータをもとに、更により高度で専門的な検査を加えて、最終的な診断に至ることもあります。

これから眼科を受診しようとお考えの方、すでに眼科に通院している方は、上記のそれぞれの眼科検査について十分ご理解いただくことが出来れば、眼科医が行う1つ1つの検査がそれぞれ何を診ているのか、どんな意味を持っているのかを確認しながら診察を受けることが可能になると思います。眼科診療に対するご理解の一助となれば幸いです。

 

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白内障手術 多焦点眼内レンズ

2019.07.09

白内障の手術では、混濁した水晶体を取り除き、代わりに人工水晶体である眼内レンズを挿入する方法が行われています。この白内障手術の際に挿入される眼内レンズのうち、多焦点レンズが最近話題になっています。従来の眼内レンズは、遠方または近方のどちらか一方にしかピントが合わない単焦点レンズのみでした。所が、2007年、遠方、近方双方に焦点が合う多焦点眼内レンズが厚生労働省から認可され、2008年には先進医療として承認されました。現在白内障手術は、国内で年間約140万件が行なわれていますが、このうち多焦点眼内レンズを用いた手術は約5%程でしょうか。当クリニックの白内障の患者さんからも、単焦点と多焦点のどちらの眼内レンズが良いのか、という質問をしばしば受けます。そこで、今回は、多焦点眼内レンズの特徴についてまとめてみました。

 

多焦点眼内レンズの特徴 (単焦点眼内レンズと比較して)

1.遠方、近方ともに焦点が合うため、術後眼鏡装用を必要としない確率が単焦点レンズに比べて高い。100%眼鏡がいらないという訳ではない。一方、単焦点レンズは、遠近どちらか一方にしかピントが合わないため、ピントの合わない距離を見る時は、眼鏡やコンタクトレンズが必要である。

2.中間領域は、ピントが合わない。

3.コントラストが悪く、淡い濃淡がはっきりしない。

4.映像にシャープさ、鮮明さに欠ける。細部にわってしっかり見たい人、カメラマン、画家、デザイナー、工芸職人等の方にはお勧めしない。

5.夜間や暗所での見え方が悪く、光を見るとハロー(光のおび)やグレア(にじみ)を感じる。従って、夜間の運転の多い職業ドライバーには、むかない。

6.遠方、近方両方からの像が同時に網膜に映るので、見たくない方の像を無視するように、脳が自動的に反応する(中枢反応)。人によっては、特に高齢者や神経質な人では、この中枢反応がなかなかできないことがある。

7.もともと瞳孔径(ひとみ)の小さな人では、近方視が悪くなる傾向がある。

8.乱視の強い人では、二重に見える、歪んで見える等が強調されることがある。

9.手術費用が高額である。多焦点眼内レンズを用いた手術には保険適応が無く、自由診療となり、医療機関によって異なるが片眼30~50万円程である。

10.先進医療に指定されている。民間の医療保険加入者で高度先進医療特約を結んでいる方は、認定医療機関で承認された多焦点レンズを用いた手術をすれば、保険会社から保険金が支払われる。

11.最近、遠、中、近と3つの距離に焦点を合わせることができる3焦点眼内レンズを用いた手術も一部で行われているが、3焦点レンズは、厚生労働省の承認を得られていないため、先進医療の適応外となり、全て自己負担となる。

12.2019年4月、遠方から中間距離に焦点の合う眼内レンズ(加入度1.5Dの分節型レンズ)  が承認され、しかも保険適応となった。今後の普及が期待されるが、どの程度の有用性があるのか今の所、未知数である。

 

多焦点眼内レンズを挿入した人のなかで、実際に眼鏡を全く使用しないで生活できている人の割合は、約80%だそうです。恐らくその人たちの大半は、多焦点レンズに満足していることと思います。一方、何らかの原因で、折角入れた多焦点眼内レンズを摘出しなければならなくなった人も約1.2%いるそうです。高価なレンズだから素晴らしいレンズであるとは言えません。白内障手術の際には、どんな眼内レンズが自分に合っているのか、コストパフォーマンスも含め、十分に検討してから選んでいただき、後悔の無い白内障手術にしていただきたいと思います。

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白内障の手術時期

2019.06.12

白内障で3か月に1度通院している患者さんが、「そろそろ手術したいと思うけど、いかがでしょうか?」

私は「矯正視力は、両眼ともに1.0ですから、まだ大丈夫だと思いますよ。どうして手術をやりたいと思ったのですか?」

患者さん「友達が白内障の手術をしてとても良く見えるようになったと言っていたので、私もやりたくなりました。」

私「最近見え方で何か不便を感じますか?」

患者さん「近くが見づらいのは以前からですけど、最近特に不便になった事はありません。」

私「だったらもう少し待ちましょうよ。お友達が良かったからと言って、あなたも必ず良くなるとは限りませんよ。手術は、やらないで済むならやらない方が良いですから。」

最近、診察室で、白内障の患者さんと私との間でこんな会話が日常的にかわされています。確かに、白内障の手術時期が、最近どんどん早くなっています。私が眼科医になりたての頃、約40年前は「矯正視力が(0.1)まで下がったら手術しましょう。」でした。さすがにこれはちょっと極端な昔話ですが、白内障の手術は、術式の改善、手術機械・器具の進歩などによって、手術時間が短かく、合併症の少ない、より安全な手術になりました。また、患者さんのQOL(生活の質)の向上に対する要求度もより高くなっています。このような状況から、手術をする眼科医もされる患者さんも白内障手術をより気軽に捉えるようになり、より早い時期から行なわれるようになりました。現在では、矯正視力が(1.0)であっても行われている場合も決して稀ではありません。しかしながら、手術をするのは名眼科医といえども人間です。いつもいつも完璧な手術が出来るわけではありません。世の中に100%成功する手術は、有り得ません。白内障手術は、眼球を切開し、超音波装置を眼球内に入れ水晶体を砕いて吸引し、代わりに人工水晶体を挿入する、というのが一連の手術手技です。一歩引いて考えてみると、結構恐ろしいことをやっていますね。やらないで済む事なら一生やりたくはないですね。

私が考える白内障手術の時期は、前述の患者さんとの会話の中で、お話したように「視力が低下して、生活上不便を感じるようになった時」だと思っています。具体的にどの程度視力が下がったら不便を感じるかは、個人個人で異なると思いますが、一般的には、矯正視力(0.7~0.8)以下と言ったところだろうと思います。

 

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令和の時代が始まりました

2019.05.08

いよいよ新しい時代、「令和」の時代が始まりました。

年号が新しくなっても日常の生活は何ら変わる事はありませんが、気持ちの上では、今よりも明るい未来が来るような期待感と高揚感を感じます。

新聞やテレビの報道では、「令和の時代が災害の無い平和で穏やかな時代になると良いですね。」といった意見が多く聞かれます。特に若い人たちから、その様な落ち着いた意見を聞くと、これまでに育まれた日本独特の民主主義が、いよいよ成熟の時代に近づいたと思わずにはいられません。

「令和」の時代が、ほんとうに素晴らしい時代になると良いですね。

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院長コラム始めます

2019.04.26

この度、当クリニックのホームページを改訂するにあたり、新たに「院長コラム」欄を設ける事にしました。このコラムでは、眼科領域の種々の病気について解説するとともに、患者様が抱いている心配な点や疑問点についてお答えしていきたいと思います。
また、日頃多くの患者様の診療にあって感じた事、心に残った事なども書いてみたいと思います。 さらに院長のみならず、当クリニックのスタッフの話、当クリニックのご意見箱に寄せられた患者様のお声なども可能な範囲で取り上げていきたいと思います。
少なくとも毎月1回は、更新しようと思っています。皆様どうぞ宜しくお願いいたします。

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