院長コラム

COLUMN

Adie瞳孔について

2022.02.15

 最近経験した症例をご紹介します。30才の女性。「今朝より右眼のピントが合いにくくなった。まぶしくなった。」と言って来院されました。矯正視力は、(1.2)でしたが、右眼の瞳孔径が約6㎜と中等度に散瞳していました。光を当てて縮瞳の有無を調べる対光反射では殆ど反応せず縮瞳はしませんでした。一方、近見時の輻輳(寄り目)は可能で、その際瞳孔はゆっくり縮瞳しました。
 上記の患者様のように、片眼の対光反射が減弱又は消失し瞳孔径が大きくなり、左右眼で瞳孔不同となる所見は、緑内障発作時、外傷による瞳孔括約筋損傷、虹彩炎、動眼神経麻痺などで観察されます。この患者様は、緑内障や外傷の既往は無く、瞳孔不同以外の異常所見も観られません。また、動眼神経麻痺を疑う他の諸症状は無く、輻輳反応は正常でしたので、Adie瞳孔と診断しました。念のため、動眼神経麻痺を来たす内頸動脈の動脈瘤等の脳内病変の有無をMRI&Aで検索し、異常所見の無いことを確認しました。
 Adie瞳孔は、多くは原因不明ですが、瞳孔括約筋の麻痺により発症します。20~40才の女性に多く、80~90%が片眼性です。瞳孔が散大し対光反射が減弱しますので、眩しさ、ピントが合わない等の自覚症状を訴えます。一方、輻輳反応は正常に保たれます。瞳孔は時間とともに縮小し自然治癒しますので治療の必要はありません。眩しさが強い場合には、虹彩付きコンタクトレンズを処方します。このAdie瞳孔に膝蓋腱反射やアキレス腱反射の減弱消失が合併した症例はAdie症候群と呼ばれています。
 上記の患者様は、特に治療することも無く、約一週間で瞳孔径の左右差が無くなり眩しさは消失しました。

カテゴリー| 瞳孔

今年もよろしくお願いいたします。

2022.01.06

 新年おめでとうございます。令和の時代も早や4年目を迎えました。世の中は、相も変わらず新型コロナウイルスがくすぶり続けており、穏やかな日常を取り戻すには、もう少し時間がかかるようです。
 昨年、当クリニックでは4月に中安弘毅医師が副院長に就任し、アレルギー性結膜炎の原因検索(抗原検査)、眼瞼痙攣に対するボツリヌス注射、小児の近視抑制の為のオルソケラトロジー治療法、造影剤を使わずに眼底の血管の状態を描出するOCTA装置の導入など新しい検査法や治療法を採用してきました。また、従来の紙カルテから電子カルテシステムに変更し業務の効率化も図ってまいりました。本年は、患者様の待ち時間の短縮のため、従来の時間予約システムに加えて順番予約システムも採用する予定です。このシステムにより、患者様の待ち時間、院内滞在時間が大幅に短縮できるものと期待しています。また、手術室を増設し、白内障手術、硝子体注射、外眼手術などの外科的治療が可能となるよう計画しております。本年も全ての患者様に安心して受診していただけるよう院長、副院長を始めスタッフ全員で改善改革に努力するつもりです。どうか本年も宜しくお願い申し上げます。

カテゴリー| 眼科診療一般

OCTA(光干渉血管撮影)装置を導入いたしました

2021.12.15

OCTアンギオグラフィー(OCTA)は、OCT(光干渉断層計)を用いて、3次元的に眼底の血管を描出する新しい検査法です。この検査法の対象疾患は、網脈絡膜血管に異常を来たす疾患すなわち糖尿病網膜症、黄斑変性症、網膜静脈閉塞症、網脈動脈閉塞症、中心性網脈絡膜症、網膜細血管瘤、脈絡膜腫瘍などです。
従来、眼底の血管撮影には、造影剤を静脈注射して何十枚もの眼底写真を撮影する方法が用いられてきました。この方法では、造影剤によるショックやアレルギーの副作用が発症したり、比較的検査時間が長くかかる等のため、頻回に検査することはできませんでした。一方、このOCTAは、光干渉断層計(OCT)を用いて1枚の眼底写真を撮影するだけです。検査時間は極めて短時間で、造影剤を用いず非侵襲性ですので副作用も全くありません。そのうえ、眼底の血管を浅層、深層等深度別に描出することができます。手軽に頻回に行えるOCTAの導入によって、上記の疾患の診断や病態の把握がより正確になり、適確な治療法の選択が可能となりました。

カテゴリー| 網脈絡膜疾患

新型コロナワクチンの眼科的副反応

2021.10.22

 令和3年10月19日現在、日本における新型コロナウイルスに対するワクチン接種完了者(2回接種者)は8650万人、全人口の68.8%に達したそうです。最近の感染者数急減には、ワクチン接種が大きく貢献しているものと思います。一方、このワクチン接種による副反応についての大規模な調査も報告されています。ファイザー社製のワクチン接種1億回以上を対象にした接種後の副反応報告によると、副反応疑いとして報告された症状疾患は、接種部の腫脹・発赤・疼痛、発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐、筋肉痛などが主なものです。しかし、これらの諸症状以外にも、ほとんど全身に渡ってありとあらゆる症状や疾患が報告されています。眼科的な障害もたくさん報告されています。最も多かった症状は、眼(結膜)の充血、眼瞼の腫脹、視力低下、眼のかゆみなどでした。病名としては白内障、緑内障、網膜裂孔、網膜剥離、網膜出血、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、結膜炎、強膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎、視神経炎、硝子体混濁、眼球運動障害、光視症などが報告されており、眼科的な副反応もとても多彩です。私の患者様の中にも、1回目の接種後2日目にぶどう膜炎を発症した方がおられました。一週間で炎症は消失し、2回目の接種では全く炎症は出ませんでした。この方は、もともとぶどう膜炎の既往があり、ワクチン接種の副反用かどうか診断に迷う所です。新型コロナウイルス自体も、ワクチン接種も非常にうっとうしいですね。第六波が来ない様に祈るばかりです。皆様、今後も油断無く、感染防止に努めていただきたいと思います。

カテゴリー| その他

小児の近視眼に対するオルソケラトロジー治療について

2021.07.09

  オルソケラトロジー治療とは、特殊な形状の高酸素透過性ハードコンタクトレンズを夜間就寝時に装用することによって、角膜前面を平坦化させて近視を矯正する方法です。この方法で十分な矯正が得られれば、昼間はメガネやコンタクトレンズが不要となり、裸眼で快適に過ごすことができます。また、装用を中止すれば、角膜形状や屈折状態は元に戻りますので、可逆的な安全性の高い方法と言えますが、長期的な副作用については、新しい治療法ですので解っていないのが現状です。一方、近年小児期にこのレンズを継続して装用すると、眼軸長の伸展が抑制され近視の進行が抑制されることが解ってきました。成人後、強度近視になると様々な重篤な眼の病気を引き起こすことが知られています(悪性近視)。本方法は、単に近視を矯正するだけではなく、強度近視とそれに伴う重篤な眼合併症(悪性近視化)を予防できるという点で大変意味のある治療方法と思われます。

カテゴリー| 近視